アンダーグラウンド音楽夜話

「ありきたりな音楽に飽きた」 そんな方のために、農作業の傍ら音楽の世界を掘り続けてきた主がニッチでディープなアーティストをジャンル問わずご紹介します

THA BLUE HERB - 日本ヒップホップ史の先駆者 前編【日本のヒップホップの名盤・おすすめアルバム】

 

皆さんは、今チャレンジしていることってありますか?

 

僕で言えば、最近始めたこのブログは間違いなく大きなチャレンジだし、就職試験・受験に向けて頑張ってるっていう人もいれば、資格取得に向けて猛勉強中の人もいることだろう。

 

なんにせよ、何かをやり遂げるときって、ストイックな姿勢が大事だよね。

だけど、それが分かっていても、ついつい怠けちゃったり、だらけちゃったりすることって誰しもあると思うんだ。

 

そんなときに聴いてもらいたいのが、今回ご紹介する日本のヒップホップグループ、ザ・ブルーハーブ

 

この人たちは、「なんでそこまでやるの?」「アスリートなんですか?」ってくらい創作に対する姿勢がストイックで、聴いてて身がシャキッと引き締まること間違いなし。

「自分を追い込んででも目の前の目標を達成したい!」っていう人には特におススメ。

 

だけどそれだけじゃなくて、そっと背中を押してくれるような優しさあふれる曲もたくさんあって、その懐の深さも大きな魅力のひとつだと思う。

 

さて、ここからは早速ブルーハーブの紹介に入りたいと思うんだけど、

彼らは僕の人格形成に多大な影響を与えたグループで、MCのBOSS THE MCが綴ってきた言葉のひとつひとつが自分にとっては教典みたいなものだから、先に断っておくとこの回は結構ボリューミーになりますw 

あんまり文章が長くなるとくどくなるんで、普段は一記事あたりの文字数を2500字以下にしようって決めてるんだけど、それだけではとても収まりきらないだろうから、前編・後編に分けて、書きたいことを端折らずに全部書いちゃおうかなと。

 

ちょっと長くなっちゃうけど、ブルーハーブの魅力をしっかり理解できる内容に仕上げるつもりなので、どうか途中で脱落せずについてきてください。

 


ROADS OF THE UNDERGROUND

☝僕が一番好きなブルーバーブのMV「ROADS OF THE UNDERGROUND」。

彼らの魅力が全て詰まっているといっても過言ではないので、まずはこれを視聴してみてくださいな。

 

地元札幌から発信する研ぎ澄まされた言葉と音

 

ブルーハーブはMCのBOSS THE MC(以下ボス)、トラックメイカーのO.N.O.、ライブDJのDJ DYEからなる「蒼の一個小隊」(彼らは自分たちのことを度々こう表現している)。

結成は1997年で、以来ずっと地元である札幌市を拠点に置いて精力的に活動してきたんだ。

 

彼らが一貫して守り続けてきたのは、「地元に腰を据えて音楽を発信する」というスタンス。

東京への一極集中化が著しかった当時の日本のヒップホップシーンに向けて、

東京に出て音楽なんて古いんだ 地元も仕切らずに何歌う気だ(天下二分の計)」って痛烈なリリックを言い放つその強気な姿勢が、業界に物凄い衝撃を与えたんだよね。

 

というのも、ネットが今ほど発達していなくて、ましてやSNSなんかなかった当時、地方のアーティストが日の目を浴びるには、東京の大御所ミュージシャンに取り立ててもらうか、ラジオ局やテレビ番組で紹介されるくらいしか選択肢がなかったわけ。

 

だけどそんな音楽業界の古びた仕組みに強烈な違和感を感じていた彼らは、レーベルに入らず、自分たちで調達した資金を元手にアナログ音源を制作して、文字通りドブ板営業を続けながら、地道に作品を世に広めていったんだ。

 

自主制作なんて今じゃ普通のことかもしれないけど、先述したように情報発信の手段がかなり限られていている中、ボスもO.N.O.も元手が一切ない状態からスタートして、長年かけて貯めたバイト代と(真意の程は定かではないけど)サラ金から借りた限度額いっぱいのお金を全て音源の制作費に突っ込んで賭けに出たわけだから、その勇気たるや半端ないと思う。

 

必ず時代は変わる いつだって追う者は追われる者に勝る」 - 時代は変わる

 

なにせ少数派から始めなかったら 勝ち上がるのにやりがいがなくなるからな」 - 天下二分の計

 

あの苦難と屈辱にまみれた日々を思い出せ 次はやってこない ひと思いに襲い掛かれ」 - BROTHER

 

生き様が俺のライムの看板さ 言わせ続けてやるぜ あの男がまさか」 - MOTIVATION

 

別の道があるガキじゃない 30過ぎが守ってちゃ先は短い」- MOTIVATION

 

北の本物は 言い訳や負け惜しみを堪えてやるべきことをやるんだよ」 - 孤憤

 

☝初期~中期にかけて発表した曲のリリックから見て取れるように、「他人に頼らず期待せず、自分自身の力で前へ突き進む」という確固たる信念こそが、これまでのコンスタントな活動を支え続けてきた屋台骨になっているんだ。

 

O.N.O.のトラックも独創的でとにかく上質。

シリアスな曲調と力強いビートがボスの歌詞と絶妙にマッチしていて、このふたりの名コンビぶりもカッコいい。

 

不世出の詩人BOSS THE MC

 

初期の頃の強気でストイックな姿勢が強烈すぎて、そこが取沙汰されることが多いブルーハーブだけど、ボスの生み出す哲学的で文学性あふれる歌詞も大きな特徴のひとつ。

ここでその内容について説明しようと思ってたんだけど、たぶん実際に聴いてみてもらった方が早いのでw、僕が特に好きな3曲を紹介します。

 

BRIGHTER

BRIGHTER

  • provided courtesy of iTunes

ブルーハーブのアルバムには、窮地に追い込まれていたり、辛い状況に立たされていたりする人を奮い立たせるような内容の曲がたくさんあって、僕も何度も励まされてきた。

2019年の冬に札幌でのライブを見に行ったんだけど、この曲を聴いたときは涙腺崩壊して顔がグシャグシャになりましたw

 

路上

路上

  • provided courtesy of iTunes

☝ネパール・カトマンズに住む麻薬の売人が、その日暮らしを抜け出すために必死にもがく様を描いた「路上」。

人間の業(カルマ)や死生観について歌った文学性あふれる曲。

 

未来世紀日本

未来世紀日本

  • provided courtesy of iTunes

☝中華連邦の一部に組み込まれた未来の日本で、記憶中枢を司る管理システムに翻弄される男の苦悩を描いた「未来世紀日本」。

ボスのSF的な感性が最も現れている曲。

 

それとボスは「ラブソングは作らない」「海外の人に向けたリリックは書かない」とインタビューで公言していて、これも詩人としては際立った個性だと思う。

 

人間の本質を、日本語という言語を使ってどこまでえぐり出せるか

これがボスの創作活動に対する一貫したテーマで、その硬派な姿勢は、「白鯨」で知られるハーマン・メルヴィルのような海外のハードボイルド作家にも通じるものがあると個人的には感じるんだよね。

 

後編(おススメのアルバム)に続く☟

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