アンダーグラウンド音楽夜話

「ありきたりな音楽に飽きた」 そんな方のために、農作業の傍ら音楽の世界を掘り続けてきた主がニッチでディープなアーティストをジャンル問わずご紹介します

John Zorn - アヴァンギャルドミュージックの帝王 前編【アヴァンギャルド音楽の名盤・おすすめアルバム】

 

唐突だけど、皆さんはオタクの人ってどう思います?

僕は、自分自身が「ブルーベリー・カシス栽培農家」っていうニッチな(?)職業に就いている上に凝り性なこともあって、ジャンル問わずオタクの人には強い親近感を覚えるんだよね。

特に「それって一体なんの役に立つの?」って思っちゃうようなマニアックな分野を脇見もせずにまっしぐらに突き詰めてる人が大好きで、そこに共感してくださる方もきっといらっしゃるんじゃないかと思う。

 

そこで今回ご紹介するのは、音楽界きってのサブカルオタクとして知られ、サックス奏者、作曲家、プロデューサー、バンドマスターなど多彩な顔を持つニューヨーク出身のユダ人音楽家ジョン・ゾーン

 

まだジョン・ゾーンを聴いたことがないという方! あなたは本当に幸運です。

なにせ、彼が生み出してきた奇想天外でぶっ飛んだ音楽の世界に初めて触れられるのだから。

是非、最後まで読んでいってくださいね。

 

知る人ぞ知る音楽研究家・親日

 

彼の人となりを一言で表すとしたら「好奇心の塊」。

プレーヤー・作曲家としてだけではなく音楽研究家としての顔も併せ持っていて、その研究対象は、※グラインドコア、クラシック、ジャズ、オールディーズ、世界各国の民族音楽、映画音楽など非常に広範囲。

※テンポの速さに特化したメタルのサブジャンル

 

中でもとりわけ好きなのは日本の歌謡曲で、大の親日家としても知られているんだよね。

90年代に、高円寺のアパートの一室を借りてニューヨークの自宅と頻繁に行き来していたのは、ファンの間では有名な話。

なんでロケーションが高円寺かっていうと、それは、昔ながらのレコード屋を巡って謡曲のレコードと昭和のピンク映画のポスターを収集するため。

彼と親交の深い音楽家の※大友良英さんがアパートに訪れた際、壁一面に貼られたピンク映画のポスターとズラリと並べられた大量の歌謡曲のレコードに面食らったらしいんだけど、これもファンの間では結構有名なエピソード。

※ドラマ「あまちゃん」のOP曲を制作。日本の実験音楽界を牽引してきた凄い人です

 

ja.wikipedia.org

☝なぜかは分からないけど、ライブのときは決まって迷彩のミリタリーパンツと大きめのTシャツorパーカー姿のジョン・ゾーン

オタクの大学生みたいなイケてないファッションだが、彼の内面的な魅力が現れていて逆にサマになってるから不思議w

 

ジョン・ゾーンの音楽の根幹 - フリージャズと折衷&実験主義

 

ジョン・ゾーンの音楽の根底にあるのは※フリージャズで、特にサックス奏者でフリージャズの先駆者として知られるオーネット・コールマンは、彼を語る上では外せない存在。

※音階・コード・リズムといったルールに縛られない自由な演奏を目指すジャズの派生ジャンル

 

Folk Tale

Folk Tale

  • provided courtesy of iTunes

オーネット・コールマンの自由奔放で切れ味鋭いソロが楽しめる「Folk Tale」。

 

既存の音楽理論を打破して独自のスタイルを構築したコールマンの精神性はたくさんのミュージシャンに影響を与えたわけだけど、特にその「イズム」を強く受け継いでいるのは他ならぬジョン・ゾーンだと思うんだ。

 


John Zorn - Jazz in Marciac - Live 2010 (Full Show)

☝こちらは彼が発明した即興演奏の様式「コブラ」。

ジャスチャーやカードを使って、さながらオーケストラの指揮者みたいにバンド全体をコントロールしながら音を作り上げていくんだけど、こういうユニークな発想はコールマンの影響からきていると思う。

 

この他に特色として挙げられるのは、様々な音楽様式が「混在」している楽曲ないしアルバムが多いという点。

 

誤解を恐れずに言うと、ジョン・ゾーンの音楽(特に初期)ってごった煮の鍋みたいな感じで、「好きなジャンルをひとまとめにしてひとつの作品にぶち込んで、そこからどんな出汁が取れるのかをワクワクしながら実験している」ような印象を受けるんだよね。

かと思うと、それぞれの楽器やプレーヤーの相性を計算しながら緻密に構築している作品(これは後期が多い)もあったりして、その二面性がまた面白い。

こういう折衷主義的かつ実験的なアプローチはいかにもユダヤ人の芸術家って感じで、彼の魅力の深さはそんなところからもきているのかなと思ったり。

 

世に残したアルバムの数はもはや未知数

 

で、ここからは彼の作品について紹介していこうと思うんだけど、なんせこの人は手掛けているプロジェクトが相当数あって物凄く多作だから、実を言うと、この記事を書いている僕自身も、彼の作品群の全体像は全く把握できていないっていうねw

 

今、彼のWikipediaを見直してみて初めて知ったんだけど、ソロアルバムだけでも80枚以上出してるらしい。

(途中で数えるのが面倒くさくなったからちゃんとした数は分からないけど、たぶんそのくらい)

それに加えて、これまで手掛けてきた数々のプロジェクトやバンドの諸作品、コラボ作、プロデュース作も加えたら、少なく見積もってもその倍はあるわけで・・・💦 

(これほど大量の作品を世に残したミュージシャンって、彼か※リー・スクラッチ・ペリーくらいなものなんじゃないかな。とにかく異常なペースでアルバムを出してます)

※レゲエ・ダブの世界では超有名なプロデューサー・エンジニア。

 

てなわけで、よほどのファンでもなければ全部を聴くのは到底不可能だし、ましてや初めて聴く人は何から入れば良いのか分からず混乱すること必死かと思うので、後編では、彼の代表的な3つのプロジェクトと、おススメのソロアルバムについて紹介したいと思います。

 

☟後編はこちらから

www.ongakuyawa.site