【レゲエ入門編】メロディが極上なルーツ・レゲエ20選 前編【レゲエの名盤・おすすめアルバム】
- Bob Marley & The Wailers - Live!
- Bob Marley & The Wailers - Catch a Fire
- The Gladiators - Trentchtown Mix Up
- Clinton Fearon - Heart and Soul
- Bunny Wailer - Black Heartman
- Peter Tosh - Legalize It
皆さんはレゲエってお好きですか?
・ジャマイカ生まれの音楽
・陽気で明るい
・ボブ・マーリーが有名
って感じのイメージが一般的かと思いますが、レゲエの歴史は、ヨーロッパ人によってアフリカ人がジャマイカに奴隷(サトウキビ畑での労働力)として連れてこられた大航海時代に遡ることができます。
「圧制によって苦しめられてきたジャマイカ人に平等な人権を!」
そんな気運が20世紀中盤から徐々に高まり、1970年代には自由と平和を象徴する音楽として世界中に広まりました。
そんな奥深くて面白いレゲエですが、
・興味はあるけど、どこから聴き始めていいか分からない
・ボブ・マーリーは知ってるけど、他の代表的なアーティストが分からない
っていう方も多いんじゃないでしょうか?
かくいう僕も、レゲエを聴き始めた頃は、アーティストの数がめちゃくちゃ多いのでどこから聴き始めれば良いのか皆目見当がつかず、自分のお気に入りを探すのに、ずいぶん時間をかけて、色々なアルバムを片っ端から物色していたもんです。
そこでこの記事では、僕がこれまで聴いてきたなかで、どんな人にもとっつきやすいメロディの優れたレゲエアルバムを厳選してご紹介。
基本的にどれもレゲエを代表する名盤ばかりですが、中には世間にあまり知られていない隠れた傑作もあります。
ちなみに、年代やサブジャンルを問わず紹介すると膨大な数になってしまいキリがなくなるので、以下の項目に絞って選んでみました。
・レゲエ文化全盛期である60年代~80年代前半の間にデビューしたアーティストのアルバム
・王道のレゲエ(ルーツ・レゲエ)として認知されているアルバム(スカ、ダブ、クラブミュージック系の作品は除外)
・レゲエの生まれた国ジャマイカ出身のアーティストのアルバム
・一般的に、多くのレゲエリスナーからメロディが優れていると評価されているアルバム
この記事を読めばとりあえずレゲエの骨格は掴めると思うので、前編・中編・後編を一通り読んで、自分にしっくりくるアルバムを見つけてみてください!
※最初は10選で書くつもりでしたが、どうしてもあれこれ取りこぼしてしまうので20選にしました。他にも紹介したい優れたアルバムはまだまだたくさんあるのですが、とりあえずマストな作品だけを選んでみましたよ!
それでは行ってみましょう!
Bob Marley & The Wailers - Live!
ボブ・マーリーの人気が絶頂を迎え始めた70年代中盤に、ロンドンで行われたライブの模様を収めた一枚。
レゲエの旨味は全てこの一枚に詰まっていると言っても過言ではないだろう。
ボブ・マーリーはベスト盤から入る人が多いけど、やはり彼の醍醐味はライブパフォーマンスにあるのではないかと思う。
彼は基本的に、観客の顔を見ながら歌を歌わない。
目をつぶりながら顔に手を当て、祖国ジャマイカの同胞たちの苦しみや悲しみに思いを馳せながら、切実な歌詞を力強いメロディに乗せて歌うんだよね。
だから彼にとって歌とは、天に捧げる祈りそのものなんだと思う。
こちらのアルバムが発表される前年に、ウェイラーズの初期メンバーであるピーター・トッシュとバニー・ウェイラーは残念ながら脱退しているんだけど、バンドの演奏は相変わらずキレッキレ。
ボブ・マーリーの歌声も円熟の域に入ってるし、会場との一体感も圧巻の一言。
ジャンルを問わない「ライブアルバムの名盤〇選」みたいなランキングでも必ずと言っていいほど上位に入ってる大名盤なので、未聴の人はとりあえず聴くべし!
Bob Marley & The Wailers - Catch a Fire
ボブ・マーリーのスタジオアルバムに関していえば、後期より初期の方が断然おススメ。そこに異論のあるファンもたくさんいるとは思うけど、レゲエ特有の煙たさや不良っぽさが一番楽しめるのはこちらのデビューアルバムだと思う。
ま、目を細めながらガンジャを吸ってるボブ・マーリーの顔が載ったジャケットにだいぶ引っ張られた印象であることは間違いないんだがw
後期ももちろん最高なんだけど、ピースフルな世界観が全面に打ち出されているからか、初期の不良っぽい感じが好きな僕としてはちょっと退屈なんだよね。
ウェイラーズのデビューアルバムでもある本作には「Concrete Jungle」や「Kinky Raggae」といった隠れた名曲がたくさん入っていて、この背骨に響くようなグルーヴ感こそがウェイラーズの真骨頂だと個人的には思ってるので、リズムセクションにこだわりのある人には特に聴いてもらいたい。
The Gladiators - Trentchtown Mix Up
レゲエ音楽・文化の根幹を形成したと言っても過言ではないレーベル、スタジオ・ワン出身のザ・グラディエイターズが、1976年にメジャーレーべル(ヴァージン・レコード)に籍を移し発表したデビュー作にして代表作。
このアルバムの最大の特徴は低予算で作られていること。
メジャーと契約する前の貧乏時代に録音したので、ホーンセクションもなければ、キーボードもなし。
しかも録音にかけられる時間もほとんどなかったためか、音の作りが簡素でちょっと物足りない感じもするんだけど、そのシンプルさが逆に彼らの持ち味であるメロディの美しさを最大限に引き立てている。
特に収録曲の「Chatty Chatty Mouth」は、後にソロデビューするメンバーのクリントン・フィーロンが自身のライブでも頻繁に演奏している名曲中の名曲。
これだけを聴くためにトライする価値あり。
粗削りだけど若々しいパワーに満ちた名作なので、必聴ですよ!
☝リンクのアルバムは、「Trentchtown Mix Up」を含む計4枚のアルバムが全部聴けるお得なセット。
Clinton Fearon - Heart and Soul
先に紹介したザ・グラディエイターズのメンバーで、ダブ界の重鎮プロデューサー、リー・ペリーの下でも多数レコーディングを行ったクリントン・フィーロンがソロ転向後に発表した10枚目のアルバム。
それまでのアルバムでは本格的なバンドサウンドで録音してたんだけど、今作からは、アコースティックギター、アコースティックベース、コンガをはじめとするパーカッションなど、アコースティック楽器のみを使用。
クリントン・フィーロンといえばキャッチーで暖かみのあるメロディが最大の特徴で、僕個人としてはレゲエ界No.1のメロディメーカーなんじゃないかと。
特にこのアルバムはひとつひとつの曲のメロディの質が物凄く高く、彼のメロディメーカーとしての才能が爆発している印象。
無駄を徹底的に削ぎ落としたシンプルな演奏も相まって、何度も聴いても飽きがこない。
でもその割には日本での商品ページのレビュー数が極端に少なくて、僕的にはかなり過小評価されているレゲエアルバムのひとつだと思う。
う~ん、もったいない!
ピースフルなレゲエを求めている人はまずこのアルバムから入るべし!
誰が聴いても納得の、安定の名盤です。
Bunny Wailer - Black Heartman
ボブ・マーリー、ピーター・トッシュと共に、ウェイラーズの一役を担っていたレゲエ界の重要人物であるバニー・ウェイラー。
ウェイラーズの人気拡大に伴って所属レーベルに「白人にも理解できる音楽を作って世界で勝負しろ」と言われ、それに反発する形でグループを脱退。
ボブ・マーリーとピーター・トッシュは、その後それぞれが世界を股にかけてライブを行いレゲエを世界に広めたんだけど、バニー・ウェイラーは祖国ジャマイカに留まり、農業を行いながら地道な活動を続けたんだ。
こちらは彼が1976年に発表したソロ転向後の最初のアルバムで、タイトル通り「黒さ」が際立つ王道のレゲエサウンドを楽しめる。
ジャケットのおどろどろしい雰囲気とは似つかない暖かみのあるメロディが特徴で、ボブ・マーリーのような切実さは感じられないが、静かに語りかけるような歌い方が歌詞に説得力を持たせている。
特に収録曲の「Dream Land」は後続のレゲエミュージシャンたちに大きな影響を与え、※ラスタファリニズムの思想をストレートに表現したマスターピースとして多くの人に愛されている。
※かつてのエチオピア皇帝ハイレ=セラシエを神として信仰し、アフリカ回帰を唱えるジャマイカの政治・宗教運動
その他にもレゲエらしさ全開の名曲ばかりなので、是非ともチェックしてほしい一枚だ。
Peter Tosh - Legalize It
こちらは、ピーター・トッシュがウェイラーズを脱退した後の1976年に発表した初のソロアルバム。
マリファナ畑のど真ん中で、「なんか文句あんのか」とでも言いたげな目の据わった表情でガンジャをキメているピーター・トッシュの姿がインパクト大。
アルバムタイトルの「Legalize It」には「マリファナ(ここでいうItはマリファナを指している)を合法化しろ」というメッセージが込められている。
実のところ、ピーター・トッシュはローリング・ストーンズと交流があって、レゲエの演奏法を教えたりするほど親密な仲だった。
後にローリング・ストーンズのレーベルからアルバムを出したことで他ジャンルのミュージシャンやリスナーからも大きな注目を集め、たくさんの国でライブを行いレゲエを世界に広めたんだ。
また、黒人の平等な権利の獲得や核の廃絶を訴えたりと、政治的な姿勢を貫き通したことでも有名。
1987年、不運なことにも強盗に殺害され43歳の若さでこの世を去ったが、彼が残した傑作の数々は今でもたくさんの人に愛されている。
「Legalize It」は強いメッセージ性を持つアルバムだが、収録曲はどれもゆったりとしたテンポで、終始リラックスした雰囲気に包まれていてたまらなく心地良い。
こちらもレゲエを語る上では外せない名盤なので、是非ご一聴を。
中編に続く(現在執筆中)
John Zorn - アヴァンギャルドミュージックの帝王 後編【アヴァンギャルド音楽の名盤・おすすめアルバム】
- 入門にうってつけなプロジェクト「Masada」
- アヴァンギャルド音楽の歴史を変えた「Naked City」
- グラインドコアとフリージャズを合体させた「Painkiller」
- モダンジャズやクラシックをベースにした近年のソロ作
☟前編を未読の方はこちらから
http://ongakuyawa.site/entry/johnzorn-review
入門にうってつけなプロジェクト「Masada」
時系列順でいくとこちらは後期のプロジェクトになるんだけど、間違いなく一番とっつきやすいのであえて最初に持ってきました。
民謡「ドナドナ」や映画「シンドラーのリスト」のテーマ曲で有名な、ジューイッシュ音楽のルーツともいえる伝統的なジャンル「クレズマー」の音階を使用したメロディが特徴的。
マサダには大別して「エレクトリック・マサダ」と「マサダ・ストリング・トリオ」の2グループがあるんだけど、どちらもジョン・ゾーンによって集められた各界の名プレーヤーによる驚天動地の化学反応が楽しめるので、是非聴いてみてほしい。
☝エレキギター、エレキベース、キーボードなど、電子楽器をメインに編成されたエレクトリック・マサダ。
特にロック寄りのフュージョンが好きな人にはドストライクな内容となっているはずなので、是非ご一聴を。
☝バイオリン、チェロ、コントラバスによるストリング編成の「マサダ・ストリング・トリオ」。
クラシックを意識した伝統色の強いサウンドと、クレツマーの土着的な音階が見事に融合されていてカッコいい。
アヴァンギャルド音楽の歴史を変えた「Naked City」
ネイキッド・シティは、1988年に結成され、以降およそ5年間にわたって活動を続けた初期のジョン・ゾーンの代名詞ともいえるアヴァンギャルド・グループ。
☝楽器編成は、エレキギター、エレキベース、ドラムス、ボーカル、サックスといたって普通だが、5秒おきくらいのペースでジャンルの異なる楽曲が次々に切り替わって演奏される特異なスタイルは、当時かなりの物議をかもしたらしい。
様々なジャンルの音楽をぶつ切りにして脈略もなく繋ぎ合わせたカオスな音像を前にして、恐らく皆さんがそうであるように、僕も最初に聴いた時は頭に大きな「?」が浮かんだ。
だがそのうち、こんな途方もない悪ふざけのようなプロジェクトに本気で取り組んでいるメンバー一同の変人ぶりがだんだん愛おしくなってきて、一時期はハマりにハマりヘビロテで聴いてたもんだ。
真面目にバカやってる人たちって、やっぱり最高にカッコイイのです。
ちなみにボーカル(というかシャウト?)を担当しているのは日本アヴァンギャルド音楽界の至宝、山塚アイ。
こんな最高のシャウトをぶちかます人、僕は彼以外に思い当たりませんw
グラインドコアとフリージャズを合体させた「Painkiller」
こちらは、ジョン・ゾーンのグラインドコアに対する熱烈なリスペクトが如実に表れているグループ。
ドラムスに元※ナパーム・デスのミック・ハリス、エレキベースに音楽プロデューサーのビル・ラズウェルを迎え1991年に結成。
※グラインドコアを世界に広めた先駆者的バンド
1995年にミック・ハリスが脱退して以降は、様々なミュージシャンをゲストに迎えながら不定期で活動を続けてきたんだ。
☝グラインドコアの高速ドラムと、フリージャズの唸るようなサックスが奇跡の邂逅を果たした記念碑的(?)デビューアルバム「処女の臓腑」(なんつー名前w)収録曲の「Scud Attack」。
ネイキッド・シティ以上にアヴァンギャルドでカオスな世界観だが、僕個人としては数あるジョン・ゾーンのプロジェクトの中で一番のお気に入り。
モダンジャズやクラシックをベースにした近年のソロ作
ネイキッド・シティとペイン・キラーだけ切り取ると「アングラなヤバい人」に思われかねないジョン・ゾーンだけど、ここ10年間くらいで発表した作品はどれもモダンジャズやクラシックを根底に据えた上品な作風となっている。
一通り聞いてみると、いわゆる王道の音楽を手掛けても一級品の才能の持ち主であることが分かって興味深い。
☝こちらは僕がこれまでに聴いてきたジョン・ゾーンのソロアルバムのなかで一番好きな「O'o」収録曲の「Miller's Crake」。
ネイキッド・シティやペイン・キラーの世界観とはあまりにも対照的で、「本当に同じ人が作ったの?」と思わず疑ってしまう。
上記2グループが黒のジョン・ゾーンだとしたら、マサダやソロ作は白のジョン・ゾーンといったところか。
その多彩さには本当に驚かされるばかり。
さて、ここまでジョン・ゾーンの音楽について一通り紹介してきたわけだけど、いかがだったでしょうか?
ここで視聴していただいた曲はまだまだ氷山の一角に過ぎないので、興味が湧いた方は是非彼のディスコグラフィを掘り下げてみてほしい。
余談だけど、今回この記事を書いてみて思ったのは、(☝でもちょこっとだけ言及したが)「ユダヤ人の芸術家って本当に面白いな」ってこと。
そのうち当ブログで紹介しようと思っている現代音楽家のスティーブ・ライヒや、画家のマルク・シャガールをはじめ、ユダヤ人の芸術家って、創作に対するアプローチが極めてロジカルなんだよね。
他民族の文化のあらゆる要素を裁断して散りばめ、コラージュ的に繋ぎ合わせて全く新しい作品へと昇華させる数学的な手法は、世界広しといえどユダヤ人くらいにしかできない芸当なんじゃないかと思う。
ジョン・ゾーンも、作曲をしたり、バンドのコンセプトについて考えたりするときは、まず頭に浮かんだ抽象的なイメージを50枚くらいのカードに書き出して、ファイルに整理してから具体的な形に落とし込んでいくらしいんだよね。
そうした背景を知った上で彼の音楽を聴くとより深く楽しめるんじゃないかな。
是非、様々な顔を持つ鬼才ジョン・ゾーンの摩訶不思議で奇想天外な世界に肩までどっぷりと浸かってみていただきたい!
というわけで今日はこの辺で。Thank you for reading!
John Zorn - アヴァンギャルドミュージックの帝王 前編【アヴァンギャルド音楽の名盤・おすすめアルバム】
唐突だけど、皆さんはオタクの人ってどう思います?
僕は、自分自身が「ブルーベリー・カシス栽培農家」っていうニッチな(?)職業に就いている上に凝り性なこともあって、ジャンル問わずオタクの人には強い親近感を覚えるんだよね。
特に「それって一体なんの役に立つの?」って思っちゃうようなマニアックな分野を脇見もせずにまっしぐらに突き詰めてる人が大好きで、そこに共感してくださる方もきっといらっしゃるんじゃないかと思う。
そこで今回ご紹介するのは、音楽界きってのサブカルオタクとして知られ、サックス奏者、作曲家、プロデューサー、バンドマスターなど多彩な顔を持つニューヨーク出身のユダ人音楽家ジョン・ゾーン。
まだジョン・ゾーンを聴いたことがないという方! あなたは本当に幸運です。
なにせ、彼が生み出してきた奇想天外でぶっ飛んだ音楽の世界に初めて触れられるのだから。
是非、最後まで読んでいってくださいね。
知る人ぞ知る音楽研究家・親日家
彼の人となりを一言で表すとしたら「好奇心の塊」。
プレーヤー・作曲家としてだけではなく音楽研究家としての顔も併せ持っていて、その研究対象は、※グラインドコア、クラシック、ジャズ、オールディーズ、世界各国の民族音楽、映画音楽など非常に広範囲。
※テンポの速さに特化したメタルのサブジャンル
中でもとりわけ好きなのは日本の歌謡曲で、大の親日家としても知られているんだよね。
90年代に、高円寺のアパートの一室を借りてニューヨークの自宅と頻繁に行き来していたのは、ファンの間では有名な話。
なんでロケーションが高円寺かっていうと、それは、昔ながらのレコード屋を巡って歌謡曲のレコードと昭和のピンク映画のポスターを収集するため。
彼と親交の深い音楽家の※大友良英さんがアパートに訪れた際、壁一面に貼られたピンク映画のポスターとズラリと並べられた大量の歌謡曲のレコードに面食らったらしいんだけど、これもファンの間では結構有名なエピソード。
※ドラマ「あまちゃん」のOP曲を制作。日本の実験音楽界を牽引してきた凄い人です
☝なぜかは分からないけど、ライブのときは決まって迷彩のミリタリーパンツと大きめのTシャツorパーカー姿のジョン・ゾーン。
オタクの大学生みたいなイケてないファッションだが、彼の内面的な魅力が現れていて逆にサマになってるから不思議w
ジョン・ゾーンの音楽の根幹 - フリージャズと折衷&実験主義
ジョン・ゾーンの音楽の根底にあるのは※フリージャズで、特にサックス奏者でフリージャズの先駆者として知られるオーネット・コールマンは、彼を語る上では外せない存在。
※音階・コード・リズムといったルールに縛られない自由な演奏を目指すジャズの派生ジャンル
☝オーネット・コールマンの自由奔放で切れ味鋭いソロが楽しめる「Folk Tale」。
既存の音楽理論を打破して独自のスタイルを構築したコールマンの精神性はたくさんのミュージシャンに影響を与えたわけだけど、特にその「イズム」を強く受け継いでいるのは他ならぬジョン・ゾーンだと思うんだ。
John Zorn - Jazz in Marciac - Live 2010 (Full Show)
☝こちらは彼が発明した即興演奏の様式「コブラ」。
ジャスチャーやカードを使って、さながらオーケストラの指揮者みたいにバンド全体をコントロールしながら音を作り上げていくんだけど、こういうユニークな発想はコールマンの影響からきていると思う。
この他に特色として挙げられるのは、様々な音楽様式が「混在」している楽曲ないしアルバムが多いという点。
誤解を恐れずに言うと、ジョン・ゾーンの音楽(特に初期)ってごった煮の鍋みたいな感じで、「好きなジャンルをひとまとめにしてひとつの作品にぶち込んで、そこからどんな出汁が取れるのかをワクワクしながら実験している」ような印象を受けるんだよね。
かと思うと、それぞれの楽器やプレーヤーの相性を計算しながら緻密に構築している作品(これは後期が多い)もあったりして、その二面性がまた面白い。
こういう折衷主義的かつ実験的なアプローチはいかにもユダヤ人の芸術家って感じで、彼の魅力の深さはそんなところからもきているのかなと思ったり。
世に残したアルバムの数はもはや未知数
で、ここからは彼の作品について紹介していこうと思うんだけど、なんせこの人は手掛けているプロジェクトが相当数あって物凄く多作だから、実を言うと、この記事を書いている僕自身も、彼の作品群の全体像は全く把握できていないっていうねw
今、彼のWikipediaを見直してみて初めて知ったんだけど、ソロアルバムだけでも80枚以上出してるらしい。
(途中で数えるのが面倒くさくなったからちゃんとした数は分からないけど、たぶんそのくらい)
それに加えて、これまで手掛けてきた数々のプロジェクトやバンドの諸作品、コラボ作、プロデュース作も加えたら、少なく見積もってもその倍はあるわけで・・・💦
(これほど大量の作品を世に残したミュージシャンって、彼か※リー・スクラッチ・ペリーくらいなものなんじゃないかな。とにかく異常なペースでアルバムを出してます)
※レゲエ・ダブの世界では超有名なプロデューサー・エンジニア。
てなわけで、よほどのファンでもなければ全部を聴くのは到底不可能だし、ましてや初めて聴く人は何から入れば良いのか分からず混乱すること必死かと思うので、後編では、彼の代表的な3つのプロジェクトと、おススメのソロアルバムについて紹介したいと思います。
☟後編はこちらから
Aphex Twin - 「テクノモーツァルト」と称される天才音楽家【エレクトロニカの名盤・おすすめアルバム】
普通の人では絶対思いつかないようなアイディアや、ぶっ飛んだ思考回路を持った天才の頭の中身を覗いてみたい。
こんな欲求、あなたにはありませんか?
アートの世界ならゴッホ、ビジネスの世界ならスティーブ・ジョブス、歴史の偉人なら三国志の諸葛亮公明など、好きな天才はたくさんいるけど、音楽の天才は?って聞かれたら、僕は真っ先にこの人を挙げるかな。
それが今回ご紹介する、イギリス・コーンウォール出身のAphex Twin。(本名リチャード・D・ジェイムス)
先に断っておくと、この人は世界的に有名なアーティストで、日本にもそれはそれはたくさんの熱狂的なファンがいるから、このブログの「ニッチなアーティストを紹介する」というコンセプトには全くそぐわないんだけどw
僕自身があまりにも好きすぎて取り上げないわけにはいかなかったので、彼の魅力についてとっくりと語っていこうと思います。
☝2021年1月現在の時点での最新MV「T 69 Collapse」。 ヘッドホンorイヤホン推奨です!
ジャンルとしては、強いて言えばエレクトロニカ、テクノ、アンビエント、アシッドハウス、ドラムンベースとかが当てはまるんだけど、本当に独創的で個性的な世界観を持ってる人だから、僕としては何らかの枠にはめるのは無粋なことだと思ってる。
そして彼の作品群の最も面白い点は、幼い子供のように無邪気さと残虐性が同居しているところ。
とてもキャッチ―で聴きやすい曲もあれば、破壊的な衝動を喚起させるノイズサウンドをひたすら展開する曲なんかもあったりして、彼の音楽を聴いていると、子供が書いた自由奔放な絵を見ているような感覚に囚われるんだよね。
それと、どこか哀しみや孤独感を感じさせる独特な雰囲気を纏っている曲が多いのも大きな特徴。
彼は二卵性双生児で、生まれてすぐに双子の兄が亡くなってしまったんだけど、これまでに生み出してきた曲の数々は、その兄に捧げるレクイエムなのかもしれない。
初期の傑作「Selected Ambient Works 85-92」
☝こちらは1992年に発表した最初のスタジオアルバム。
主に10代の頃にパソコンとサンプラーを使って黙々と制作した膨大なデモテープのなかから、特に※アンビエント色の強い落ち着いた雰囲気の曲をセレクトして繋ぎ合わせているんだけど、「本当に10代の少年が作ったの?」って疑っちゃうくらいの完成度の高さ。
同じく若い頃から異次元の才能を発揮していたモーツァルトになぞらえた「テクノモーツァルト」という異名がついたのは、このアルバムがきっかけなんだ。
さらに、「Selected Ambient Works 85-92」はFACT Magazineの「90年代のベストアルバム」で第1位に選出されていて、僕自身もこれまで聴いたアルバムのなかでは一番のお気に入り。
まだ聴いたことがないという人は、是非最初から最後まで通して聴いてみてほしい。
単調なビートに、無機質なメロディと、話し声や機械の作動音などのサンプリング音が乗っかってるだけの非常にシンプルな作りなんだけど、デビューアルバムからすでにエイフェックス・ツインならではのユニークな音の組み合わせ方が確立されていて、何度聴いても新しい発見があるんだよね。
☝アルバム収録曲でエイフェックス・ツインの初期の代表曲「Xtal」。
13年という長い空白期間を経て突如リリースされた新作「Syro」
エイフェックス・ツインは、その後も多くの名作アルバムやミュージックビデオを制作し、音楽家としての地位は不動のものに。
☝同アルバム収録曲のなかで僕が一番好きな「Cornish Acid」。
しかし、人気が絶頂を迎えていた2001年に2枚組の大作アルバム「Drukqs」をリリースしてからは、パッタリと活動を休止しちゃうんだ。
(原因は諸説あって、レコード会社と金銭面でモメたことや、有名になり過ぎたプレッシャーによるところが大きいとされているんだけど、真意の程は明らかにされていない)
「Drukqs」がリリースされた2001年といえば僕は中学2年生で、そのときにはじめてCD屋の視聴コーナーで彼の存在を知ってハマりにハマったんだけど、それからは待てど暮らせど新作が出てこないわけ。
で、長い年月が経って僕も社会人になり、いつの間にか彼の存在そのものが自分のなかで薄れていったんだよね。
☝でもそんな中、突如として新作「Syro」がリリースされるっていうニュースをネット記事で目にして。
あの時の興奮は今でも忘れられないね。
カレンダーに赤丸をつけて、発売日まで指折り数えて待ってたもんねw それくらいワクワクした。
そして、待ちに待った発売日を迎えて、CD屋でアルバムを買った帰りに車のなかで大音量で聴いたわけですよ。そしたらこれがまた最高にカッコいいんだよね。
独自の世界観はそのままに、音質と曲の作り込みが各段にレベルアップしてて、感涙ものだった。
誇張なしに、発売日から向こう3か月間くらいは毎日このアルバムを聴いてたわw
☝僕が「Syro」収録曲のなかで一番好きな「CIRCLONT14」。
このアルバムの制作に入る前に、リチャードは奥さんをもらって子供も作り、一家の主になったんだ。
家族ができたことによってそれまでの尖った部分もイイ感じに角が取れていて、音楽に対して深く向き合えていることが伺える内容でもあった。
そういった意味でも、彼の精神が安定していることを確認できて、常に新作を心待ちにしている一ファンとしては本当に嬉しかったな~。
さて、ここまで読んでいただいてどうだったでしょうか?
エイフェックス・ツインは「Syro」リリース以降若い頃の勢いを取り戻したように新作を続々と発表しているので、気になる方チェックしてみてね。
それと、彼の別名義であるAFXの作品群も実験的で遊び心溢れる素晴らしい出来だから、両者を比較して聴いてみるのもおススメ。
是非、現代のモーツァルトが生み出してきた唯一無二の世界を堪能してほしい。
それでは今日はこの辺で。 See you soon!
Mississippi John Hurt - 晩年にデビューしたふたりの伝説的フォークシンガー(後編)【フォークの名盤・おすすめアルバム】
☟前編を未読の方はこちらからどうぞ!
63歳でデビューしてから92歳で亡くなるまで、およそ30年間にわたってプロとして活躍したエリザベス。
それに比べて、ジョンがプロとして活動したのは、70歳でデビューして、73歳で亡くなるまでのたったの3年間。
そのわずかな期間中に多くの偉業を成し遂げ、フォーク界に巨大な足跡を残していったジョンの生涯は一体どんなものだったのか。
ここからは、彼が歩んだ人生の全貌を見ていこう。
農作業の傍らギターの腕を磨いた少年時代
1892年ミシシッピ州キャロルで生まれたジョンは、家庭が貧しかったため、10歳でやむなく小学校を中退。
アヴァロンに移り住んだ後、小作人だった両親とともに働き始めたんだ。
この頃から、忙しい農作業の合間を縫ってギターを独学で練習し、時々路上で弾き語りをするように。
その暮らしぶりは非常に貧しく、弾き語りで得られるお金もほんのわずかだった。
後に多くのギタリストが影響を受けることになる独自のスリーフィンガー奏法を身に着けたのはこの時期で、その巧みで味わい深いプレースタイルはすでに少年期から確立されていたといわれているんだ。
☝親指でベースラインを弾くのと同時に、人差し指と中指でメロディを弾くジョンのスリーフィンガー奏法。
こちらは彼の代表曲「You Got to Walk That Lonesome Valley」。
30代半ばで大きな挫折を経験
そんなこんなで、大人になってからもずっと小作人として働き続け、相変わらず細々と生計を立てていたジョン。
人生初の大チャンスがやってきたのは、34歳のときだった。
当時の演奏仲間で※フィドルプレーヤーのウィリー・ナムールが、フィドルのコンテストで優勝し、オーケー・レコーズでアルバムを録音する権利を勝ち取ったんだ。
※バイオリンのことをカントリー・フォーク畑ではこう呼ぶ
ジョンは喜び勇んでウィリーと共にメンフィスとニューヨークシティで録音作業を行い、それまで培ってきた技術やセンスを惜しみなく注ぎ込んだ全13曲を制作。
ところが、満を持して世に放った力作アルバムは全く売れず、そうこうしているうちに版元であるオーケー・レコーズも不況の煽りを受けて業務停止になっちゃって。
失意のどん底に落ちたジョンは、音楽の道を諦めて故郷のアヴァロンに帰り、それまでと同じように小作人の地味な暮らしへと戻っていったんだよね。切ない・・・( ノД`)
☝ジョンが若い頃に故郷アヴァロンを思って書いた「Avalon, My Home Town」。
彼の故郷に対する愛情が伝わってきて、これを聴くと視界が涙で滲んでくるのです・・・(´;ω;`)
民俗学者に励まされて再デビュー ☞ 目覚ましく活躍
それからというもの、ジョンは人目につなかないアヴァロンのド田舎で農作業をしながら半ば隠居者みたいな隠遁生活を送り、気がつけば還暦を過ぎてすっかりおじいちゃんに。
しかし、「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったもので、誰からも見向きもされなかったジョンの録音物をたまたま聴いて衝撃を受け、彼を必死で探し始めた人物がいたんだ。
それが、民俗学者のトム・ホスキンス。
少ない手がかりを元にアヴァロンのジョンの家の場所を突き止めていきなり訪問し、
「ワシントンD.C.に移ってもっと広い舞台で演奏したらどうですか? あなたならきっとできますよ! もったいないですよ!」ってめっちゃ励ましたわけ。
このとき、ジョンはすでに70歳。
普通なら、「いや~、俺もう歳だから無理だよ」とか言いそうなもんだけど、やっぱり若い頃からの夢を捨てきれなかったのと、いきなり家に押し掛けてきた見ず知らずの民俗学者にべた褒め&激励されて、「もういっちょやったるか!」ってハートに火が点いたんだろうね、
トムのアドバイスに従って即ワシントンD.C.に移住し、同年(1963年)7月に開催されたニュー・ポート・フェスティバルに鳴り物入りで出演。
与えられた短い持ち時間のなかで3曲だけ持ち歌を披露したんだんだけど、その深い音楽性が観衆の心を掴み、「返り咲いたブルースマン」としてたちまち脚光を浴びたんだ。
最晩年になって突如人生の春が訪れたジョンは、それ以降、若い時代の遅れを取り戻さんばかりの勢いで目覚ましく活躍。
プロとしてデビューしてから73歳で亡くなるまでの3年間で3枚のアルバムを発表し、各地でも精力的にライブ活動を行って、フォーク史にその名を堂々と刻みましたとさ。
めでたし、めでたし。
おススメのアルバム
☝入門用にはこちらのベスト盤がおススメ。収録曲数も多いのでたっぷり楽しめます。
それと、ミシシッピ・ジョン・ハートを語る上でやっぱり外せないのは、日本のフォークシンガー高田渡。
国は違えど、彼はジョンのDNAを色濃く受け継いだ後継者みたいな存在なので、未聴の方は是非聴いてみてください。
☝僕が大好きな「あきらめ節」。歌詞がとにかく強烈ですw
さて、ここまで読んでいただいていかがだったでしょうか?
仮にトムがジョンを見つけ出すのにあと3年の年月を要していたら、きっとジョンは田舎の小作人として一生を終えていただろうし、僕たちもこうして彼の音楽を楽しむことはできなかったわけで、それを思うと人間の運命の不思議について考えざるを得ない。
彼の人生は辛いことの方が多かったかもしれないけど、最後にはしっかり報われて最高のオチがついて、本人もさぞかし幸せなことだったろう。
良かったな~、ジョンさん!👏
今日はこの辺で! See you in the next article.
Elizabeth Cotten - 晩年にデビューしたふたりの伝説的フォークシンガー(前編)【フォークの名盤・おすすめアルバム】
突然ですが、渋い音楽って好きですか?
渋い音楽といえばやはりフォークとブルース。
僕のフォーク・ブルースとの出会いはボブ・ディランとザ・バンドで、オヤジが大好きだったからその影響で聴き始めたんだよね。
皆さんのなかにも、親の影響で昔の音楽に親しむようになったっていう人は多いんじゃないでしょうか?
今回は、数あるフォーク・ブルースシンガーのなかでも、僕的に一番渋くて味わい深い人たちをご紹介。
是非最後まで読んでいってください。
ボブ・ディランの血肉となったフォークミュージックの先人たち
今回、前編・後編に分けて取り上げるのは、エリザベス・コットンとミシシッピ・ジョン・ハート。
あのボブ・ディランにも多大な影響を与えたアーティストとして、フォーク・ブルースリスナーの間では語り草になっている伝説的な存在なんだ。
百聞は一見に如かず。
まずは、お二方の最晩年の写真が載っているこちらのふたつのアルバムのジャケットをご覧いただきたい。
いかがだろう? この圧倒的なおばあちゃん・おじいちゃん感(語彙力w)
ふたりの老人が幸せそうにギターを抱えている写真は、おばあちゃん子・おじいちゃん子の人なら、きっとたまらないものがあるだろう。
次に、是非再生ボタンを押して音源を一通り聴いてみてほしい。
どうだろうか? この曳き立てのブラックコーヒーのような素朴で暖かい演奏と歌声は。たまらないよね~。
彼らは決して歌が上手いわけではないし、ギタープレイの技巧性も高いとはいえない。
しかし、フォークシンガーは世界に数多くいれど、味わい深さという点においては、ふたりにかなう者はいないのではないかと思う。
人生の酸いも甘いも味わい尽くした者にしか醸し出せない、圧倒的な存在感と説得力がその音楽には宿っていて、少年時代のボブ・ディランが熱烈に憧れたのも頷ける。
ちなみに、誤解を与えるといけないので先にお伝えしておくけど、このふたりの間柄は、夫婦でもなく、血縁者でもなく、赤の他人同士。
(生前一緒にコンサートを行ったりして親交はあったんだけどね)
たけど、彼らにはやたらと共通点☟が多いもんだから、今回同じくくりで紹介しようと思ったわけ。
・大恐慌や世界大戦など、20世紀の荒波を生き抜いた黒人シンガー
・「フィンガーピッキング奏法」(弦を親指と人差し指・中指でつま弾くフォークの奏法)の先駆者
・晩年になってからようやくデビューを果たした
ここで特に注目してほしいのは、「晩年になってからようやくデビューを果たした」という点。
そう、何とこのふたり、プロのミュージシャンとして活動し始めたのは還暦を過ぎてからで、それまでの職業はというと、エリザベスは家政婦で、ジョンは小作人。
音楽業界のような華やか世界とは縁遠い環境で、安い賃金を頼りに細々と暮らしていたんだ。
彼らはプロになるまでにそれはそれは長い道のりを歩んだわけだけど、そのストーリーを知った上で曲を聴くと、より深~く染み入るものがあるはずなんだよね。
というわけで、ここからは、それぞれの人生の軌跡を早足に辿ってみよう。
まずはエリザベスから!(ジョンは後編で)
少女時代に名曲「Freight Train」を作曲
☝エリザベスの代表曲として今でもたくさんのフォークリスナーに愛されている「Freight Train」は、実は彼女が10歳そこそこのときに書いたもの。
この頃から彼女は音楽の道へ進む願望を持っていたんだけど、13歳で母親と一緒に家政婦として働き始めた上に、15歳で結婚して早々に娘リリーを授かっちゃったもんだから、不本意ながらも10代で大好きなギターを手放すことにしたんだ。
その後、リリーが大きくなって結婚したのを機に夫と離婚。
リリーと、リリーの夫と共にワシントンD.C.へ居住地を移し、今度はデパートの従業員として働き始めたんだよね。
音楽一家の家政婦に ☞ 才能を見出されデビュー
ある日、デパートで迷子になっていた女の子の手を取り、一緒にお母さんを見つけてあげたエリザベス。
このお母さんがなんと、後に著名なフォークシンガーとなるマイク・シーガーの母で作曲家のルース・クロフォード=シーガーだったというから、人の世の縁とは本当に不思議なもの。
それがきっかけでルースと仲良くなったエリザベスは、シーガー家の家政婦として雇ってもらえることに。
で、音楽一家であるシーガー家の面々と親交を深めていく中で音楽への情熱を徐々に取り戻していき、40年ぶりにギターを手にして、作曲活動に没頭していくようになったんだ。
63歳でデビューアルバムを発表 ☞ 80代でグラミー賞受賞
エリザベスは、1958年にマイクの協力のもと寝室で録音したデビューアルバム「Floksongs and Instruments With Guitar」を発表。
これが高い評価を得て、その後ツアー活動にも精を出すようになり、
それから四半世紀あまりが経った1984年(80代)には、アルバム「Elizabeth Cotten Live」でついにグラミー賞まで受賞しちゃったんだ。
還暦を過ぎた一介の家政婦が、40年ぶりにギターを手に取って一からコツコツ練習し始めて、それから20年後にグラミー賞を受賞する。
こんなの、物語でも思いつかないような筋書きだよね。
事実は小説よりも奇なりとはまさにこのとですな。
そして名実ともにフォーク界の大物アーテイストとなったエリザベスは、92歳で亡くなるまで、毎日のように大好きな弾き語りをしながら幸せな晩年を過ごしましたとさ。
めでたし、めでたし。
おススメのアルバム
☝さて、そんな彼女のおススメのアルバムだけど、僕はこちらの「Freight Train and Other North Carolina Folk Songs and Tues」を推したい。
☝で紹介した「Freight Train」をはじめとして、暖かみのあるサウンドを楽しめる傑作なので、是非手に取ってみてほしい。
2020年12月の農作業&雑記 冬囲い・商談・フードラップづくり・パン屋へ配達・ギフトボックスのラッピング
どうも! すっかり冬ですね。
年の瀬が迫ってますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今月は雪が積もる前に終わらせなければならない作業も順調に終わり、雪が積もってからは毎日事務所に引きこもって商品の発送作業をしております。
今年はみんなにとって本当に大変な一年でした。それまでは当たり前にできていたことが急にできなくなったりしてやきもきする日もありましたが、お陰様で家族やお客様をはじめたくさんの人に支えられて、無事に楽しく過ごすことができました。
2020年もどうもありがとうございました。2021年もどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
今月の作業の様子をまとめてみました。
お手すきの際にでも覗いていってみてください。
冬囲い編
今、北海道はめっきり冷え込んできてすっかり寒くなってきたんですが、寒空の下、「冬囲い」という作業をやっておりました。
これは、ウチの大事な大事なブルーベリーとカシスの木たちが雪の重みで折れないように、一本一本丁寧に枝を支柱にロープにくくりつけていく作業。
冬囲いの何が大変って、なんといっても、開始20分足らずで、寒さで手足がかじかんでくるところ。
だから手足がかじかんできて「もうだめだ~」ってなってきたら、暖房で暖かくしてある作業小屋に入って、暖かいお汁粉を飲んで一心地つくんです。それで手足を暖めて復活させて、作業→小屋で休憩→作業→小屋で休憩ってループを繰り返すんですよね。
しかしお汁粉うめ~。
あんこLOVE♡
商談編
フードラップづくり編
今週は、洗って何度も繰り返し使える「フードラップ」づくり。
ウチの農園ではブルーベリーの授粉用にミツバチを飼ってるんですが、そこから穫れる蜜蝋を有効活用できないかなってことで、僕のパートナー(函館市内でRomioRiっていうエシカルブランドをやってるよ)の発案で、服作りの過程で出るアフリカ布の端切れに蜜蝋を染み込ませるフードラップを作り始めたんです。
☝RomioRiのネットショップ。布マスク、ワンピース、リュックなど、色々なアイテムを取り扱ってます。
それで、ミツバチにとって住みよい環境づくりの大切さや、プラスチックゴミ問題の現状を、プラスチックラップの代用品として使えるフードラップで伝えていこうっていう目的のもと、JUSTIN and ROMIIっていうクリエイターズチームを作ったんです。
フードラップの作り方は簡単で、
布をアイロン台の上に置く→蜜蝋をまぶす→上にクッキングシートを敷く→アイロンをかけて蜜蝋を布に染み込ませる
っていう工程で誰でも簡単に作れます。
これをふたりでせっせせっせとやってるんですが、いくら簡単といっても、数が数だから結構時間がかかるし重労働💦
でも、これも自然の大切さを伝える大切な仕事だから、これからも頑張ってやっていこうと思ってますよ!
フードラップは、野菜や果物はもちろんのこと、パンやおかしなどを包むのにもおススメ。
で、使い終わったら、水でサッと洗って乾かすだけ。
本当に便利でかわいいから、気になった人は是非使ってみてください!
☝商品ページ
パン屋へ配達編
ウチの農園は、夏の間にパートの方たちと一緒に摘み取りをした後全体の収穫物の7割くらいを冷凍保存して、オフシーズンになったら、地元のお店やECサイトで冷凍ベリーを販売しています。
今日は、父親の代から20年以上ブルーベリーを取引してくださっている地元のパン屋さんに冷凍ブルーベリーを配達してきました。
ちょうど今日から函館にも雪が積もり始めたので、気を付けながらゆっくり運転して無事配達終了。
こちらのパン屋さんは月に2、3回配達に行くんですが、女将さんがたまに大量のパンをくれるので、配達に行ってるんだか、パンをもらいに行ってるんだかもはや分からないっていうね💦w
次回の配達時はクリスマス前くらいになるだろうから、家族へのお土産にシュトーレンを買おうかな🎄 なんてことを考えながら岐路に着きました。
は~、疲れたけどパンうめえ~🍞
ギフトボックスのラッピング編
☝年末年始シーズンに入って、近頃はギフトボックスの発送作業なんかもやってます。
箱を組み立てて、商品を入れて、ラッピングして、納品書を書いて・・・などなど、室内に引きこもりせっせと作業中。
余談だけど、去年からオリエンタルラジオ中田敦彦さんのYoutube大学にドハマりして、こういう作業をするときは、よくかたわらに置いてあるタブレットで中田さんの動画を流しています。
あとお笑い芸人の深夜ラジオも大好きで、特に伊集院光の深夜の馬鹿力と、ナイナイのオールナイトニッポンは中学生の頃から愛聴してきた思い入れの深い番組。
1週間で5番組くらい録音しておいて、部屋で仕事をするときに、ひとりほくそ笑みながら聴くのがこの上ない至福。
日々大好きなラジオを聴きながら作業できることが最高に幸せ。
僕たちに笑いを届けてくれるお笑い芸人の皆さん、本当にありがとうございますm(__)m
作業の様子を綴ろうと思っていたのが、なぜかラジオの話になってしまったw
それではまた!
THA BLUE HERB - 日本ヒップホップ史の先駆者 後編【日本のヒップホップの名盤・おすすめアルバム】
☟前編を未読の方はこちらからどうぞ!
入門用に最適なアルバム
☝入門用としておススメなのが「THA GREAT ADVENTURE - MIXED BY DJ DYE」。
DJ DYEが代表的な楽曲群のおいしい部分だけを切り取ってシームレスにつなぎ合わせた本作は、ブルーハーブの軌跡を辿るのに最も相応しい作品。
キャリアの集大成的なセルフタイトルアルバム
☝それと、2019年に発表したセルフタイトルアルバム「THA BLUE HERB」も是非聴いてほしい一枚。
デビュー20周年の節目に発表されたこちらのアルバムは、収録曲数がなんと30曲!
親しい友人と死別したときの心情をストレートに綴った「TWILIGHT」や、太平洋戦争下の日本を振り返る「REQUIEM」など、トピックと表現の幅がグッと広がったバラエティ豊かな内容になっていて、濃密な150分間を楽しめます。
☝アルバム収録曲のなかで僕が個人的に一番好きな「今日無事」。
何かをやり遂げた後にゆっくりと聴きたい、優しくて暖かい曲。
コロナ騒動が始まった直後にリリースしたミニアルバム
☝それと、すんません、なんだかんだかなり長くなっちゃったけど、最後にこちらのアルバムもおススメさせてくださいw
セルフタイトルアルバムをリリースした翌年、つまり今年(2020年)にリリースしたこちらのアルバムは、コロナ騒動が始まった直後に発表された作品。
「この非日常が、やがて日常になってしまうのか、誰にも判らないこの日常を、そして遠ざかってしまったかつての日常を、曲にしました」
そうボス自身が語るように、先の見えない混沌とした状況だからこそ浮彫りにされた、これまで当たり前のように享受してきた日常の尊さに気付かせてもらえる内容になってます。
☝アルバム収録曲の「バラッドを俺等に」。セルフタイトルアルバムのリリースツアーの日常を綴ったリリックが胸を打つ。
大切な人や仲間との絆について歌った、これまた優しい気持ちになれる曲。
さて、ここまで読んでもらってどうでしたか?
僕個人としては、ぶっちゃけ入りはどのアルバムでもいいんで、時代ごとのトピックの違いを比較して楽しんでもらえると嬉しいな。
ボス自身も、「変化と不変の足跡の長さを楽しんでほしい」とリリックを通して言っているしね。
この記事を読んでグッとくるものがあった人、また冒頭でも触れたように、今目標に向かってがむしゃらに頑張ってる人は、是非彼らのアルバムを手に取ってほしい。
きっと心に響くパンチラインや金言がたくさん見つかるはず。
それでは今日はこの辺で! Thank you for reading.