THA BLUE HERB - 日本ヒップホップ史の先駆者 前編【日本のヒップホップの名盤・おすすめアルバム】
皆さんは、今チャレンジしていることってありますか?
僕で言えば、最近始めたこのブログは間違いなく大きなチャレンジだし、就職試験・受験に向けて頑張ってるっていう人もいれば、資格取得に向けて猛勉強中の人もいることだろう。
なんにせよ、何かをやり遂げるときって、ストイックな姿勢が大事だよね。
だけど、それが分かっていても、ついつい怠けちゃったり、だらけちゃったりすることって誰しもあると思うんだ。
そんなときに聴いてもらいたいのが、今回ご紹介する日本のヒップホップグループ、ザ・ブルーハーブ。
この人たちは、「なんでそこまでやるの?」「アスリートなんですか?」ってくらい創作に対する姿勢がストイックで、聴いてて身がシャキッと引き締まること間違いなし。
「自分を追い込んででも目の前の目標を達成したい!」っていう人には特におススメ。
だけどそれだけじゃなくて、そっと背中を押してくれるような優しさあふれる曲もたくさんあって、その懐の深さも大きな魅力のひとつだと思う。
さて、ここからは早速ブルーハーブの紹介に入りたいと思うんだけど、
彼らは僕の人格形成に多大な影響を与えたグループで、MCのBOSS THE MCが綴ってきた言葉のひとつひとつが自分にとっては教典みたいなものだから、先に断っておくとこの回は結構ボリューミーになりますw
あんまり文章が長くなるとくどくなるんで、普段は一記事あたりの文字数を2500字以下にしようって決めてるんだけど、それだけではとても収まりきらないだろうから、前編・後編に分けて、書きたいことを端折らずに全部書いちゃおうかなと。
ちょっと長くなっちゃうけど、ブルーハーブの魅力をしっかり理解できる内容に仕上げるつもりなので、どうか途中で脱落せずについてきてください。
☝僕が一番好きなブルーバーブのMV「ROADS OF THE UNDERGROUND」。
彼らの魅力が全て詰まっているといっても過言ではないので、まずはこれを視聴してみてくださいな。
地元札幌から発信する研ぎ澄まされた言葉と音
ブルーハーブはMCのBOSS THE MC(以下ボス)、トラックメイカーのO.N.O.、ライブDJのDJ DYEからなる「蒼の一個小隊」(彼らは自分たちのことを度々こう表現している)。
結成は1997年で、以来ずっと地元である札幌市を拠点に置いて精力的に活動してきたんだ。
彼らが一貫して守り続けてきたのは、「地元に腰を据えて音楽を発信する」というスタンス。
東京への一極集中化が著しかった当時の日本のヒップホップシーンに向けて、
「東京に出て音楽なんて古いんだ 地元も仕切らずに何歌う気だ(天下二分の計)」って痛烈なリリックを言い放つその強気な姿勢が、業界に物凄い衝撃を与えたんだよね。
というのも、ネットが今ほど発達していなくて、ましてやSNSなんかなかった当時、地方のアーティストが日の目を浴びるには、東京の大御所ミュージシャンに取り立ててもらうか、ラジオ局やテレビ番組で紹介されるくらいしか選択肢がなかったわけ。
だけどそんな音楽業界の古びた仕組みに強烈な違和感を感じていた彼らは、レーベルに入らず、自分たちで調達した資金を元手にアナログ音源を制作して、文字通りドブ板営業を続けながら、地道に作品を世に広めていったんだ。
自主制作なんて今じゃ普通のことかもしれないけど、先述したように情報発信の手段がかなり限られていている中、ボスもO.N.O.も元手が一切ない状態からスタートして、長年かけて貯めたバイト代と(真意の程は定かではないけど)サラ金から借りた限度額いっぱいのお金を全て音源の制作費に突っ込んで賭けに出たわけだから、その勇気たるや半端ないと思う。
「必ず時代は変わる いつだって追う者は追われる者に勝る」 - 時代は変わる
「なにせ少数派から始めなかったら 勝ち上がるのにやりがいがなくなるからな」 - 天下二分の計
「あの苦難と屈辱にまみれた日々を思い出せ 次はやってこない ひと思いに襲い掛かれ」 - BROTHER
「生き様が俺のライムの看板さ 言わせ続けてやるぜ あの男がまさか」 - MOTIVATION
「別の道があるガキじゃない 30過ぎが守ってちゃ先は短い」- MOTIVATION
「北の本物は 言い訳や負け惜しみを堪えてやるべきことをやるんだよ」 - 孤憤
☝初期~中期にかけて発表した曲のリリックから見て取れるように、「他人に頼らず期待せず、自分自身の力で前へ突き進む」という確固たる信念こそが、これまでのコンスタントな活動を支え続けてきた屋台骨になっているんだ。
O.N.O.のトラックも独創的でとにかく上質。
シリアスな曲調と力強いビートがボスの歌詞と絶妙にマッチしていて、このふたりの名コンビぶりもカッコいい。
不世出の詩人BOSS THE MC
初期の頃の強気でストイックな姿勢が強烈すぎて、そこが取沙汰されることが多いブルーハーブだけど、ボスの生み出す哲学的で文学性あふれる歌詞も大きな特徴のひとつ。
ここでその内容について説明しようと思ってたんだけど、たぶん実際に聴いてみてもらった方が早いのでw、僕が特に好きな3曲を紹介します。
☝ブルーハーブのアルバムには、窮地に追い込まれていたり、辛い状況に立たされていたりする人を奮い立たせるような内容の曲がたくさんあって、僕も何度も励まされてきた。
2019年の冬に札幌でのライブを見に行ったんだけど、この曲を聴いたときは涙腺崩壊して顔がグシャグシャになりましたw
☝ネパール・カトマンズに住む麻薬の売人が、その日暮らしを抜け出すために必死にもがく様を描いた「路上」。
人間の業(カルマ)や死生観について歌った文学性あふれる曲。
☝中華連邦の一部に組み込まれた未来の日本で、記憶中枢を司る管理システムに翻弄される男の苦悩を描いた「未来世紀日本」。
ボスのSF的な感性が最も現れている曲。
それとボスは「ラブソングは作らない」「海外の人に向けたリリックは書かない」とインタビューで公言していて、これも詩人としては際立った個性だと思う。
「人間の本質を、日本語という言語を使ってどこまでえぐり出せるか」
これがボスの創作活動に対する一貫したテーマで、その硬派な姿勢は、「白鯨」で知られるハーマン・メルヴィルのような海外のハードボイルド作家にも通じるものがあると個人的には感じるんだよね。
後編(おススメのアルバム)に続く☟
Primus - ありきたりな音楽に飽きたヤツは真っ先にこれを聴け!【オルタナティブロックの名盤・おすすめアルバム】
突然ですが、あなたは臭い食べ物は好きですか?
今回ご紹介するプライマスは、分かりやすく例えるなら音楽界のくさや。
めちゃめちゃクセがあるから最初は嫌悪感を示す人が多いんだけど、回数を重ねて聴いいていくうちにみるみるハマっちゃう、そんな不思議なバンドです。
「怖いもの見たさ」ならぬ、「臭いもの嗅ぎたさ」的な好奇心をそそられた人は、是非読んでみてください。
きっと、読み終わった頃には、プライマスの独特すぎる世界観にハマってるはず。(保証はできかねるが)
変態的な音楽性
ロックという括りで紹介されることが多いけど、彼らほど何らかのジャンルに当てはめるのが難しいバンドは他にないと思う。
分かりやすく言えばファンク+メタル。
あと、バンドの世界観を一言で表すなら「変態」。これに尽きる。
☝プライマスの代表曲「Tommy the Cat」 。
僕がいつも口惜しく思うのは、このバンド、海外での知名度と、日本での知名度の差が凄く激しいんだよね。
海外では大規模なロックフェスにたくさん出演しているし、ツアーも頻繁に行っていて物凄い集客力を持ってるんだけど、日本での人気はいまいちというか。
もちろん日本にもファンはたくさんいるし、過去にはフジロックにも出演しているんだけど、やっぱり海外での人気ぶりに比べると「だいぶ過小評価されてるな~」と思う。
実は僕、カナダ(トロント)に留学していたときに彼らのライブに行く機会に恵まれたんだけど(ライブの体験記は後述します)、熱心なファンが多くて、「本当にたくさんの人に愛されてるんだな~」って感じたのをよく覚えてる。
サウンド面では、ベースとボーカルを兼ねるフロントマン、レス・クレイプールがこのバンドの肝であり柱。
超絶技巧なんだけど、奇怪としか形容できないベースライン。
そして、呪文のような、お経のような、人をおちょくっているとしか思えないふやけた口調のボーカル。
冒頭で言及したように、初めて聴くときは嫌悪感を覚えるかもしれないけど、そんな人でも何度もループしてみると不思議とクセになってくるんだよね。
実際、僕も友達におススメして、そいつ最初は「生理的に受け付けない」って言ってたくせに、今ではすっかりプライマスファンだからねw
あと、これ本当かどうかは分からないけど、レスはライブの時、ケンタッキーのフライドチキンを素手でベタベタ触って、手を油でギトギトの状態にしてからステージに上がるらしい。
こうすると、ベースが弾きやすくなるんだって。意味分からんw
彼をサポートするドラムとギターも超絶技巧で変態的。
何回かメンバーが代わっているんだけど、どの時期のプレイヤーも一級品の腕前で安定感抜群だから、スリーピースバンドならではのタイトなグルーブ感も楽しめるかと。
ライブに行ったときのお話し
それでライブに行ったときの話なんだけど、たぶん1万人くらいかな? 大きなライブハウスに凄い数の観客が来てて、ライブが始まる前からみんなハイテンションで「Primus sucks!」(プライマスはクソだ!)ってコールしてるんだよねw
こんなコールを受けてステージに出てくるバンド、世界でプライマスしかいないと思う。
肝心の演奏はというと、やっぱりね、生で聴いてみて、「この人たちは本当に真面目なんだな」って再確認した。
特にベースの音がとてもカッコよくて、レスの音作りに対する並々ならぬこだわりが伺えたし、曲が代わる度にベースを持ち替えていて、一曲一曲に対する思い入れの強さも伝わってきた。
演奏中何回もPAにジェスチャーで指示を出していたのも印象に残ってる。
やってることは変態だけど、中身は超真面目なんですわ。そこが最高にかっこいい。
おススメのアルバム
☝そんな職人肌でユニークなレス率いるプライマスで一番おススメのアルバムは、2枚目の「Sailing the Seas of Cheese」
☝僕がアルバム収録曲のなかで一番好きな曲「
耳に残るフレーズが一番多く出てくるのはこのアルバムだと思うんで、とりあえずここから聴き始めて、ハマったら別のも聴いてみるといいかも。
この記事を読んで、日本に少しでも多くのPrimusファンが増えますように!
それでは今日はこの辺で! Thank you for reading.
Clinton Fearon - 半世紀にわたるキャリアを築いてきたレゲエの王様【レゲエの名盤・おすすめアルバム】
レゲエって、特に日本においては、チャラいイメージがどうしてもついて回ってしまっていて、敬遠している人って結構いると思うんだよね。(あくまでも僕個人の印象だよ)
それから、レゲエは派生ジャンルが多い上に、世界各国に広まっていてアーティストの数も半端ないから、どこから聴き始めればいいか分からないって人も多いんじゃないかと思う。
そんなわけで、こちらの記事では、大人でも楽しめる上質なレゲエの名曲を数多く生み出してきた大御所クリントン・フィーロンについて紹介していきたいと思います。
(大御所の割には日本での知名度がいまいちだから、是非たくさんの人に聴いてもらいたい!)
ボブ・マーリーがレゲエの神様なら、クリントン・フィーロンはレゲエの王様
レゲエの代表的なアーティストといえば、最初にボブ・マーリーを思い浮かべる人は多いはず。
あと、バーニング・スピアやジミー・クリフもレゲエを語る上では外せないレジェンドたちだし、90年代~00年代でいえば、マキシ・プリーストや、ボブ・マーリーの実子ダミアン・マーリーなんかが有名どころだと思う。
僕はひとつのジャンルに偏るのがあまり好きじゃないから、世界各国のアーティストの作品を聴くようにしてるんだけど、一番好きなのはジャマイカ生まれのレゲエ。
きっかけはそれこそボブ・マーリーで、中学生のときに初めて「Kinky Raggae」っていう曲を聴いて、背骨に響くようなグルーヴ感の虜になったんだ。
☝これ弾きたさに親からもらった小遣いで最初のエレキベースを買って、壊れたおもちゃみたいにずーっとこの曲に合わせてベースを弾いてましたw
で、それ以来レゲエの沼にはまって完全に抜け出せなくなっちゃったんだけどw(なんせレゲエは隠れた名盤や名曲があまりにも多くて、発掘しても発掘してもキリがない!)、僕のレゲエ遍歴のなかで一番インパクトがあってカッコよかったのがクリントン・フィーロン。
はじめて聴いた時は、「そうそう、これこれ!こんなのをずっと聴きたかったんだよ!」って思わず小躍りしちゃったよね。
☝その時の曲がこちらの「Mr. Want All」
フィーロンは元々ベーシストとしてキャリアをスタートさせているだけあって、ベースラインが最高にカッコイイんですわ。
それで、彼の何が一番凄いって、半世紀にも及ぶ長いキャリアのなかで、レゲエ史に残るような名作の数々をコンスタントに生み出し続けてきたところなんだよね。
これだけのキャリアを積み重ねてきたら途中でブランクもありそうなもんなんだけど、この人は1969年のデビュー以来2,3年おきにアルバムを発表し続けてきていて、しかもどれも完成度が非常に高いの。
だから、ボブ・マーリーがレゲエを世界に広めた神様なら、フィーロンはレゲエ界で最も多くの名作を生み出した王様といってもいいんじゃないかと個人的には思うわけ。
キャリア序盤で大傑作アルバム「Trenchtown Mix Up」を発表
【輸入盤CD】GLADIATORS / TRENCH TOWN MIX UP
価格:1,790円
(2020/12/15 12:04時点)
感想(0件)
☝フィーロンは元々、The Gladiators っていう※ルーツ・ロック・レゲエのバンドに在籍していたんだけど、その時代に発表した「Trenchtown Mix Up」は今でも多くのレゲエリスナーに愛されている大名盤。
レゲエの旨味を全て凝縮したかのような濃い~内容だから是非聴いてみてほしい。
※単純に言えば昔のレゲエ。ラスタファリアニズムというジャマイカの宗教運動に強く影響を受けていて、ジャマイカ人の祖国であるエチオピアの皇帝ハイレ・セラシエ一世に対する忠誠や、西洋社会・政府当局からの圧迫への抵抗をうたった曲が多い。
☝ルーツ・ロック・レゲエを聴くなら必ず押さえておきたいアルバム「Trenchtown Mix Up」収録曲の「Chatty Chatty Mouth」。
限られた予算と時間のなかで制作されたためか、ちょっと音に厚みが欠けるんだけど、そのシンプルさが逆に良い方向に作用した奇跡のような一枚。
フィーロンは、このアルバムに収録されている曲の多くを今でもライブで頻繁に演奏していて、「その後の自分の音楽性を決定づけたターニングポイントになった」とインタビューでも語っているんだ。
ソロ転向後はさらに上質なレゲエを量産
1987年、フィーロンは長年にわたるグラディエイターズでの活動に一旦終止符を打って、アメリカ・シアトルに移住。
1989年に現地で組んだバンドからアルバムをリリースするんだけど、素晴らしい内容にもかかわらず興行的にあまり振るわなくて、1992年に解散することに。
その2年後に、現在の音楽活動の母体となっているThe Boogie Brown Bandを結成。以来2020年現在に至るまで、合計13枚のアルバムを発表しているんだ。
ソロ転向後のフィーロンのサウンドは、若い頃に比べると暖かみや親しみやすさが増していて、基本的にどんなシーンにもマッチするから、例えばお店をやっている人なんかで「オシャレな音楽をかけたい」と思っているなら超おススメ。
それから、これから彼女との初ドライブデートを控えていて、車中でどんな音楽をかけたらいいか分からないそこのアナタ!(かなり限られているがw)
安心してください。とりあえず☟のアルバムをかけておけば間違いないです。
☝ソロ転向後のアルバムで一番おススメなのは、2012年発表の「Heart and Soul」。
それまでの本格的なバンドサウンドからガラッと方向性を転換して、今作ではアコースティック楽器のみを使用。
シンプルなフレーズと質の高いコーラスが特徴的な、爽やかな気分にさせてくれる一枚に仕上がってます。
☝「Heart and Soul」収録曲「On the Other Side」。
終始ピースフルなサウンドで、聴いていてホッコリとした気持ちになること請け合い。
☝このほかに、2014年にリリースしたアルバム「Goodness」もおススメ。
☝特に収録曲「Poor Nana」の歌詞がレゲエのビジョンをモロに体現していて凄くカッコいいので、ここに一部の対訳文を載せておきます。
可哀そうなナナ 可哀そうなナナ
ナナは来る日も来る日も祈った 安い賃金で働きながら
来る日も来る日も祈った より良い方法を見つけるために
来る日も来る日も祈った 思いを込めて
彼女は言う
この狂った世界をなんとかして
収集がつかなくなってしまったこの世界を
この狂った世界をなんとかして
空っぽの魂で溢れたこの世界を
共に手を取れば 私たちは再び立ち上がれる
だけど離れ離れのままなら いつか滅びてしまう
あなたの命はみんなのもの なぜそれが理解できないの?
力を合わせて ドアの外へ悪魔を追い払いましょう
遠くへ 遠くへ 追い払いましょう
フィーロンの曲の歌詞には、世界平和を願う普遍的なフレーズがたくさん散りばめられていて、どれもグッとくるものばかり。歌詞に注目して聴いてみるのも◎。
上述のおススメアルバム2枚はもちろんのこと、他の作品も傑作揃いだから、是非手に取ってみてね。
それでは今日はこの辺で! Thank you for reading.
Ezra Collective - UKジャズシーンで今一番熱いバンド【UKジャズの名盤・おすすめアルバム】
近年、映画「セッション」や漫画「ブルー・ジャイアント」をはじめとするジャズを題材にした作品が国内外で注目を集めるようになって、まだまだ一般的には根強かった「古臭い音楽」とか、「大人だけが楽しむ音楽」といったジャズに対する旧来のイメージもだいぶ払拭されてきたように思う。
ニューオリンズから始まって今日に至るまで、様々なジャンル・楽器・演奏法を取り込みながら多様化してきたジャズだけど、近年は、イギリスの若者たちによって再定義され、新たな文化へと変貌を遂げつつあるんだ。
Ezra Collective - Quest For Coin (Official Audio)
世界中の音楽ファンが注目の眼差しを向ける新しいジャズのスタイル「UKジャズ」。今回は、その中でもひときわ輝きを放つ若手バンド「エズラ・コレクティブ」について書いていくよ~!
世界を席巻するUKジャズ
なぜ今、UKジャズがこれほどの盛り上がりを見せているのか。
それは、学問全般において教育機会の乏しいイギリス国内のアフリカ・カリビア系移民や貧困層の女性に無償で音楽教育を施すことを目的に設立されたトゥモローズ・ウォリアーズっていうNPO(90年代初頭に設立)があるんだけど、ここで幼少期から英才教育を受けたミュージシャンたちが、今大人になって活躍し始めているからなんだよね。
もちろん、エズラ・コレクティブのメンバーもトゥモローズ・ウォリアーズの卒業生。
それで、エズラ・コレクティブに限らず、これはUKジャズ全体にいえることなんだけど、これまでのジャズと最も違う点はドラムのプレイスタイル。
ドラムンベース、ダブステップ、グライム、ダンスホールレゲエといった今時のダンスミュージックのビートにインスパイアされたドラムラインを叩いているドラマーがたくさんいるんだ。これが新しくて凄く面白い。
↑UKジャズシーンの最重要ドラマーといわれているモーゼス・ボイドの「Drum Dance」。
あともうひとつ顕著な特徴は、アフリカン・カリビアンミュージックへの回帰。
トゥモローズ・ウォリアーズの卒業生にはアフリカンとカリビアンが多いから、自然と祖国の音楽のテイストが各々の作品に色濃く反映されているんだよね。
UKジャズを因数分解すると、「イギリスの若者の音楽(ダンスミュージック)+アフリカン&カリビアンミュージック(原点的な音楽)をジャズで包括した」って感じになるかな。
だから、最近のダンスミュージックにあまり興味のない世代の人でも、従来のアメリカのジャズとか、※アフロビートとか、レゲエとかが好きなら、絶対ピンと来るものがあるはず。
ダンスミュージック好きの若者にとっても、UKジャズから入って、ジャズのルーツを辿っていく聴き方はいいかも。
※ファンクやジャズの流れを汲むナイジェリア発祥のアフリカ音楽
個人的にグッときたエズラ・コレクティブの曲
そんなわけで、最近の僕はといえば、UKジャズのプレイヤーやバンドのアルバムを片っ端から聴き漁っていてなかなか忙しい日々が続いているんだけどもw その中でも断トツにカッコよかったのがエズラ・コレクティブ。
メンバー全員バカテクで、しかもセンスが抜群に良くて、本当はひとりひとりの略歴について紹介したいところなんだけど(特にキーボードのジョー・アーモン・ジョーンズとドラムスのフェミ・コレオソは際立って凄い)、それだといつまで経っても記事を書き終えることができないのでw ここでは割愛します。
☝エズラ・コレクティブ以外にも、ソロ活動や他のアーティストとのコラボなど多方面で活躍するジョー・アーモン・ジョーンズ。UKジャズシーンを牽引するキーボーディストとして注目されている。
☝エズラ・コレクティブは2019年春にメジャーデビューを果たしたばかりだから、2020年12月現在の時点だとスタジオアルバムはデビュー作の「You Can’t Steal My Joy」しかないんだけど、これが近年稀に見る名盤なので、マジでおススメ。
割とアップテンポな曲が多いんだけど、収録曲はどれもバラエティに富んでいて飽きがこないから何回でも聴けちゃうんだな~。
↑僕が特に好きなのは、アフロビート創始者フェラ・クティの名曲「Shakara」のカヴァー。ゲストには、同じくUKジャズシーンで人気の高いアフロビートバンド「Kokoroko」。
この曲はフェラ・クティのなかで一番好きなんだけど、ぶっちゃけ本家よりこっちの方が完成度高いです。
↑もうひとつのお気に入りは、ロンドン出身の人気ラッパー、ライル・カーナーをゲストに迎えた「What Am I To Do」。
ヒップホップの本場アメリカのラップスタイルとはまた違う、UKラップならではのクールなライミングと、エズラならではのキレのあるビートが楽しめるよ。
というわけで、UKジャズのおススメアーティスト・バンドはまだまだたくさんいるので、これから気が向いたら小出しで紹介していきたいと思います!
エズラ・コレクティブはUKジャズ入門として最適なバンドだし、幅広いジャンルを踏襲していてとっつきやすいから、是非聞いてみていただたきたい。
Acid Mothers Temple - 日本のサイケロックといえばこのバンド! 【ライブレポート / サイケロックの名盤・おすすめアルバム】
「宇宙空間を漂ってみたい」
「無重力を体験してみたい」
これって、人間なら誰しもが一度は頭に思い浮かべたことのある、根源的な憧れだと思うんだよね。
でも当然ながら、(現時点では)僕たちは宇宙飛行士にでもならない限りこの願いを叶えることはできないじゃない?
そこで、まるで宇宙に行ったかのような気分になれる、浮遊感のある音楽はないかな~と思って学生時代にCD屋巡りをしてたら見つけたのが、今回ご紹介する日本の古参※サイケデリックロックバンド「Acid Mothers Temple」。
※幻想的でトリップ感のあるロックのこと。
Acid Mothers Temple & the Melting Paraiso U.F.O. / Electric Dream Ecstasy
☝まずは、冒頭の数分だけでいいので、こちらの公式音源を聴いてみてください(ヘッドホンorイヤホン推奨)
いかがだろう?
このぶっ飛んだ宇宙感、あなたには伝わっただろうか。
アシッドマザーは、さっき書いたように日本のバンドではあるんだけど、どっちかというと海外の人に人気が高くて、カルト的なファンが多くいることで有名なんだ。
で、実は僕、20代前半の頃にカナダ(トロント)の大学に通ってたんだけど、2009年の冬に彼らが北米ツアーでトロント市内のライブハウスに来たから、友達と一緒に見に行ったんだよね。
ライブの感想を一言で言うならね、まさに宇宙旅行を疑似体験してる感じだった。
ライブには行けなくとも、是非このトリップ感を皆さんにも味わってもらいたいので、この記事では、ライブレポをメインに彼らの魅力について語っていきたいと思います!
風貌もサウンドも最高にイカしてます
まずこのバンドはね、サウンドももちろんカッコいいんだけど、なんといってもメンバーの風貌が最高なの。
☝公式サイトの写真ページ。ここを見ると大体の雰囲気が分かります。
数年前にメンバーチェンジしてるから、僕が見に行ったときのメンバーの中で今はいない人もいるんだけど(「思い出波止場」でもプレイしてるベースの津山さんと、ドラムスの志村さん)、当時見に行った時は全員年配で(たぶん50代前半くらいかな)、最初に目を引いたのは、肩から背中にかけて伸びたボッサボサの長髪。
あとヒゲも伸ばし放題だし、服装はみんなくたびれたワークパンツかボロボロのジーパンにダルダルのネルシャツかパーカーで、津山さんに至っては、真冬にもかかわらず、足元が100均で売ってるような安っぽいゴムサンダルっていうね。
みんな仙人みたいな感じで悟りを開いてる感満載で、見た目のインパクトからしてかなりヤバい(良い意味だよw)感じがプンプン漂ってるんだよね。
曲尺はだいたいどの曲も長くて、1曲で15分強なんてのもザラ。
冒頭で紹介した音源を聴いてもらっても分かるように、
ソリッドでタイトなドラムスに、フレットの上から下までウネウネ動き回るベースとスペーシーなシンセサイザーが乗っかってて、それに空間系のエフェクトをかけたクリーンなプレイとディストーション全開のノイジーなプレイを縦横無尽に行き来するギターが加わっているのが基本スタイル。
☝彼らの代表曲「Pink Lady Lemonade」。
ライブに行ったときのお話し
僕がライブ会場に行ったときに一番驚いたのは、メンバー全員が、入り口で横一列に座って物販をしてたことかなw やる気なさそうに「Hello~」とか言いながらTシャツとかポスターとか売ってんの。
僕も友達も「うお!いきなりいた!」みたいになってw お客さんに対しても凄いぶっきらぼうで、全然会話が続かない。
それまでも色々なバンドやアーテイストのライブに行ってたけど、そんなの初めて見たからとにかく驚いちゃって。と同時に、ちょっと不安になったんだよね。
「この人たち大丈夫かな~? やる気あんのかな~?」って。
ただ、ライブが始まった瞬間、そんな杞憂は一気に吹き飛んだ。
やっぱりコアなサイケロックマニアの間で最強のライブバンドと評されているだけあって、演奏が始まると、物販にいたときの気だるい感じとは打って変わって、みんな顔つきが急にシュッと男前になって、バシッと音を決めてくるんだよね。
特にギターの河端さんのぶっ飛びっぷりが半端なくて、テンションが上がってくると、ギターの弦を掻きむしりながら頭を振り乱したりするんだけど、それがとにかく気持ちよさそうで、見ているこっちも気持ちよかった。
あんな気持ちよさそうにギターをプレイする人は他に思い当たらない。
たぶん、河端さんはギターを使って宇宙と交信してるんだろうなw そうとしか思えない。
で、最後の曲を演奏し終わった後、なぜか分からないけど河端さんがギターのヘッドを天井の照明のケーブルにぶら下げ出してw
音も鳴りっぱなしでプラーンってぶら下がってるのに、他のメンバーも特に気にすることもなく、そのまま放置してステージを去っていったんだ。
それで、しばらくしてお客さんの大半が帰った後、河端さんがスゴスゴと脚立を持ってステージに戻ってきて、ぶらさがったままのギターを脚立に登って取って、大事そうに抱えながらギターケースにしまってんのw それがとにかく可愛くてしょうがなかった。
あと印象深かったのが、シンセサイザーの東さん。
ライブが終わった後、ツアーのポスターを買ってメンバーの皆さんにサインしてもらったんだけど、隣にいた友達が東さんに「なんで音楽やってるんですか?」って聞いたんだ。(いきなりそんなこと聞くのもどうかと思うけどw)
そしたら、しばらくの間「う~ん」って言いながら考え込んだ後、一言「分かんない」ってボソリ。
僕はそれを聞いてえらく感動した。「なんてカッケーおっさんなんだ」って。
その頃、鬱っぽくなっていた僕は大学に行けない日が続いていて、「自分はこれから何をしたいんだろう?」って悶々と自問自答していたんだけど、東さんのこの一言で目の前の霧が晴れたような気がしたんだ。
「そうか、何をするにも別に高尚な理由なんか必要なくて、ただただ自分の好きなことをやればいいんだ」って。
おススメのアルバム
☝そんなイカしたアシッドマザーの一番のおススメアルバムは、2020年12月現在の時点での最新作「Reverse of Rebirth Reprise」。
凄い数のアルバムを出してるから僕も全部は聞けてないんだけど、このアルバムは曲が粒ぞろいだしミキシングもバランス良いんで、ここから聴き始めるのがいいかなと。
是非、彼らのアルバムという宇宙船に乗って、宇宙への小旅行を楽しんでほしい!
それでは今日はこのへんで! Seen you in the next article.
三度の飯よりも音楽が好きなカナダ人農家 Justin Bowmannです
こんにちは! Justin Bowmannです。
当サイトにアクセスいただき、どうもありがとうございます。
北海道函館市の隣町北斗市で無農薬のブルーベリー・カシス栽培農園「ハウレット農園」(☝ホームページ)を営んでいます。
まずは、このブログを始めるにあたって、僕の簡単な経歴をご紹介しますね。
性別:男(30代)
国籍:カナダ(だけど北海道生まれ北海道育ちの生粋の道産子)
趣味:音楽鑑賞、エレキベース(過去にはダブ、メタル、ブルーグラスなど、色々なジャンルのバンドをやってました)、読書、ラジオ聴取(主にお笑い芸人の深夜ラジオ)
これまで何をしてきたか:
今から8年前に親の農園(ハウレット農園←ハウレットは僕の苗字です)を引き継いで新規就農しました。
と同時に、フリーの翻訳家としての活動を開始(現在は農業に専念しています)。
主にアーティストやバンドの歌詞の対訳と、CDアルバムのライナーノーツの翻訳をやってました。
携わったバンド・アーティストの作品は100以上で(ポール・マッカートニー、ニルヴァーナ、クイーン、エミネム、ブライアン・アダムスなどなど)、このほかに児童書・絵本や教育関係の本の翻訳もやったりしてます。
なぜこのブログをはじめたか:
僕は三度の飯よりも音楽が好きなくらいの重度の音楽バカなんですが、一日中好きな音楽を聴き続けていたいという欲求が強すぎてどうしても勤めに出ることができず、時間の自由が利く自営業の道を選びました。
なので、畑で草刈りをしているときも、果樹の剪定をしているときも、収穫作業をしているときも、なんなら畑にいないとき(車を運転しているときや料理をしているとき)も、基本的には一日中ずーっと音楽を聴いてます。
そんな生活をかれこれ8年以上も続けてきて、この前自分のHDDに入っているアルバムの数を数えたらかなりの数(何千枚か)になってました。
自分よりももっとたくさんの数のアルバムを聴いてきたという音楽ファンの方は他にいくらでもいると思うのですが、自分がこれまで聴いてきた素晴らしい作品についてみんなに知ってもらったり、反対に、読んでくださった方から「こんなアルバムもおススメだよ」とか、「このMVかっこいいよ」みたいな感じでおススメを教えていただいたりしながら、音楽を通じて楽しい交流ができればいいな~と考えています。
これからどれくらいのペースで記事を執筆していくかはまだ決めていないのですが、本業に支障をきたさない範囲で、のんびりゆっくり続けていきたいと考えていますので、暖かい目で見守ってやっていただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました! See you again!